俺はずっと片想いを続けるだけ*2nd
王都育ちの私には海は憧れです!
ハネムーンも終わりに近付いて、何だか寂しくなっていたのですが、海に連れていってくださるなんて!
なんて、素敵な旦那様でしょう!


その海辺のホテルで私は……私達は……


「ホテルスタリオンね、良いわね」

「星が近くに見えるのよ。
 夜の散歩は素敵よ。
 波が月に照らされて、海面がキラキラしてるの」

思わずお義母様や先輩もご一緒にいかがですか、と言いかけて
私は口をつぐみました。


私、荷物にスケスケを入れていく予定……なのです。


 ◇◇◇


旦那様の仰る通りシーズンにはまだ早いのか、それ程混雑はしていませんでした。
ですが、旦那様はもう少し人出が少ないことを期待されていたようでした。


ホテルスタリオンの外観は重厚で、立派なものでした。
こちらのオーナーの伯爵様はお義父様のご友人と言うことでクレイヴン家の夏の旅行先は、こちらのホテルが定番だったそうです。


「10年以上来てなかったよ。
 あの頃の記憶より、意外とこじんまりしているな」

「でも、とても素敵です。
 連れてきてくださってありがとうございます」

「こちらこそ、グレイス。
 一緒に来てくれてありがとうございます」


荷物を置いたら、まずは思い出の場所に連れていくよ、と旦那様が仰って。


「その高台からなら、水平線を一望出来るよ」

私は微笑み返しましたが、頭の中は今夜の事でいっぱいで。
私のスケスケを旦那様は受け止めてくださるでしょうか……

ホテルのロビーを横切り、フロントに近づいた時。
女性の声が響きました。


「クリリン、クリリン、会いたかったわ!」

ク、クリリン?
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