俺はずっと片想いを続けるだけ*2nd

殿下にお招ばれされました!~グレイス

王宮に参るのは初めてでした。
16歳のデビュタントを待たずに、私は結婚したのです。

とても、お天気の良い午後でした。
そろそろ夏が始まると、庭園の樹木やお花が夏の香りを放ち始めています。

私は旦那様にエスコートされ、王太子殿下に
ご挨拶致しました。
立ち上がって私を迎えてくださった殿下に、右手で席を示していただきました。
私が席に着きますと、殿下と旦那様もお座りになりました。


「初めましてなんだけど、初対面じゃない気がする」

事前に旦那様からはお話を聞いていました。
殿下からは貼り薬の匂いがするけれど、
気付かない振りをしなさいと。

殿下が御愛用されている貼り薬はよく効くことで有名なのですが、独特の匂いがあり
貼っていると、誰にでも気付かれてしまうのが
難点でした。

日常的に殿下は、お身体の何処かしらの箇所を
何処かしらの場所に、ぶつけられているそうなのです。

学園の図書室には、高等部時代の殿下が作られた穴がそのまま残されていて、『殿下の穴』と呼ばれていました。

どうしたらそんなことになるのかわかりませんが
おそらく殿下が何処かをぶつけられて、
本棚が次々とドミノ状に倒されて、
壁に穴を作られたのです。

その直後に留学されたので、当時同級生だった
お姉様からは
『国外逃亡したのよ』と聞かされていました。
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