色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅱ
 年は18~20歳くらいだろうか?
 黒色の制服を着た騎士団の男が立っている。
 大きな目にぷっくりとした涙袋。
 両サイド刈り上げられ、前髪を上げた髪型。
 髪型がいかついのだけど、美しい顔立ちをしているので、そんなに怖くは見えない。

 男性を見つめていると、
 イチゴは「うっさい! 馬鹿太陽!!」と言って、部屋を出て行ってしまった。
「え、イチゴさん!」
 こちらが呼ぶも虚しく、イチゴはもう戻ってこない。

 男性はこっちをじろりと見たかと思えば、
「あ、すんません。レッスン中でしたか?」
 と言って、中腰になって頭をぺこぺこと下げてきた。

 私は立ち上がって、
「はじめまして。イチゴ様にピアノを教えています。エアーです」
「ヘアーさん?」
「いえ、『え』です。え・あ・あ」
 ゆっくりと大声で言う。
「ああ、噂はかねがね」
 と言って、男性はまた頭を下げた。
 男性は頭を上げると黙ってこっちを見てくる。
 何だよと言いたくなるくらい、じっとこっちを見てくる。
「えーと、失礼ですが、どちら様で?」
「あ! イチゴのやつ。なんの説明もしてないんですか。あいつめー」
 ドアのほうを眺めて大声で男性が言った。
 いや、だからお前誰だよ…冷ややかな目をしていると。
 男性は気をつけの態勢になった。
「どうも、自分はルーク・アンドリュー・カッチャーです」
「…それは、本名なんじゃ?」
 ツッコミどころ満載の男に顔がひきつる。
 騎士団の人間が見知らぬ人間に本名明かすのは、一番駄目なのでは…
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