色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅱ
 窓の外を眺めると、10人ほどの男の子たちがギャーギャーと叫びながら太陽様と遊んでいる。
 小学校だと思っていたけど、ここは孤児院だそうだ。
 2~9歳までの子供20人ほどが暮らしているという。

 外を眺めながら、太陽様は子供に好かれる人なんだなあと思った。
「騒がしくてすいませんねえ」
 さっきまで、どこかへ行っていたジャックさんが応接間に戻って来て、目の前のソファーに座った。
「子供たちは、俺なんかより太陽と遊ぶほうが好きみたいですね」
 皮肉ぶるようにジャックさんが言う。
「ジャック様と太陽様は幼なじみと伺ったんですが…」
「先生、俺に様付けはしなくていいですよ」
「え、でも。国家騎士団の制服を着ていらっしゃるではないですか」
 この国で一番偉いと言われる職業は騎士団。
 その中でも国家騎士団は最上級に凄いのだとシナモンが言っていた。
 身分が高い者でも、身分が低い者でも弱肉強食の争いで、のし上がった国家騎士団は貴族以上に偉い存在なのだと言われているらしい。

「俺は、ここの孤児院で育って騎士団学校に進んで。太陽はご存知の通り領主の息子で、騎士団学校に進んで…全然、身分が違うっていうのに。アイツは俺のことを見下したり馬鹿にすることなんて一度もなかったんです」
「…なんか、わかる気がします」
 ふふっと笑うと。
 ジャックさんはじっとこっちを見た。
「こちらのピアノは誰かからの寄贈品なのですか?」
 弾いているときに感じた、弾き覚えのある感覚。
「そうです。というか、孤児院なんてほとんどが寄贈品ばかりですよ」
 ジャックさんは立ち上がると、ピアノへ近寄って片手をピアノの上に乗せた。
「太陽の母親が寄贈してくれたんです」
「…やっぱり、そうですか」
「先生はピアノのことになると本当に詳しいんですねえ」
 再び、ジャックさんは目の前に座る。
「太陽の母親は毎月、この孤児院に来て慈善活動をしてくれていたんです。ピアノを弾いてくれたり、子供たちと遊んでくれたり…あの頃の思い出は今でも凄く大切な思い出です」
 整った顔で懐かしそうに言うジャックさん。
 制服を着てなければ完全にホストにしか見えないけど(笑)
「今は母親の意志を継いで、太陽がたまに遊びに来てくれるんですよ」
「そうなんですか」
 窓の外で無邪気に走り回る太陽様の笑顔がまぶしい。
 誰に尋ねても、彼のことを悪く言う人がいない。

「先生、ぶっちゃけると。俺、先生に太陽の良い所をアピールしろって言われてるんですよ」
「アピール? 誰にですか」
「そりゃ勿論、太陽です」
 にっとジャックさんが意地悪そうに笑う。
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