11年目のバレンタイン〜恋を諦める最後の告白
プロローグ〜さよならするために

(……できた)

自宅のキッチンの金属製のトレイの上には、色とりどりのボンボンショコラ。奮発して、高めの洋酒を入れてみた。
あまり甘いものが好きでない彼のために、カカオ成分が高めのほろ苦いチョコを使ってる。

出来上がったチョコを紙の箱に詰めて、丁寧にラッピングする。

10歳から続いてきた毎年の恒例行事。

初めてのバレンタインは、お小遣いで買ったハートチョコ。それで甘いものが苦手だと知った。
初めて手作りしたのが、中1。
失敗して固まらなかったのに、彼は目の前で食べてくれた。
高校生になってからは、アルバイト代でプレゼントもするようになった。男性と付き合った経験がなく、センス皆無なプレゼントでも喜んでくれた。

そして、短大生になった去年。少しでも大人と見られたくて、オシャレをし慣れないメイクをして挑んだ…
告白。

「真人さん、好きです」

けど、彼の答えはいつも同じ。

「ありがとう、嬉しいよ」

それだけ。

10歳から、何ひとつ変わらない。

10歳年上の彼は穏やかに笑って、わたしのバレンタインデーの告白をスルーしてしまう。

毎年、毎年。

モテる真人さんは、女性の影が絶えたことはない。
麗奈からまた新しい女性と付き合ったと聞く度に、苦しくて涙を流してきた。

そして、とうとう今年の正月。真一さんから結婚話を聞いた、と麗奈から聞いた。

もう、終わりなのだ……と。ようやく諦める決意がついた。

今年、わたしは短大を卒業する。

だから、あなたからも卒業するために。さよならするために、ーー最後の告白をします。

11年目のバレンタインデーで。


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