婚約破棄したい影の令嬢は
その力が使えたのは昔の話だ。
今はディアンテだけが、その力を持っている。


「お兄様にはもっと美しい人と婚約してもらいたかったわ‥!」

「お、おい‥‥まだ」

「どうせ聞こえはしないわよ‥!それにこんなに地味だったら社交界でも使えないわ!本当に先が思いやられるわ」


(‥全部聞こえているわ)

せめてディアンテの姿が完全に見えなくなってから言えばいいのに。

それとも敢えて聞こえるように言っているのだろうか。
ディアンテの前では辛うじて良い顔をしている公爵夫人も、ディアンテが居ないところでは暴言三昧だ。

ディアンテがこれだけ嫌がらせを受けても黙っているのは、アールトン一家が幸せに暮らす為だ。

ディアンテは御礼を言って栗毛の侍女にタオルを返す。
いつもディアンテに親切な栗毛の侍女のお陰で、ディアンテはとても助かっていた。

何故ディアンテに優しいのかが気になるところだが、今はそれどころではない。
子爵家に帰り、どうバレないように動くかを考えなければならないからだ。

ディアンテは馬車に乗り込み、眼鏡を投げ捨てると重たい溜息を吐いた。
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