泡沫の恋
「部屋が違うと中も違うんだね~」
二人は部屋に入るなり自分たちの部屋との比較を始めた。
こっちのほうが部屋が広いとか風呂の場所が違うとか洗面台が新しいとか部屋のあちこちを勝手に開けて不平不満を漏らす。
もちろん、今井が。
春野は緊張した様子で今井のあとをついていく。
「つーか、女子2人からいい匂いすんだけど。やべー」
「バカ。あんまジロジロ見んな」
翔太が二人の姿を遠慮なく見続けるのを俺は牽制する。
もちろん、翔太は俺の気持ちを分かっているし春野を狙っているとは考えづらい。
それでもいくら仲のいい翔太とはいえ、好きな女のことをジロジロみられるのは良い気がしない。
「お前、変なこと考えんなよ」
「分かってるって。さすがに押し倒したりはしないって」
「当たり前だろ」
一通り見終わると、二人はベッドに腰かけた。
俺の隣に春野が、翔太の隣に今井が座る。
「ねえ、あたしウノ持ってきたんだけどやんない?」
「おー、いいね!やろうぜ」
ノリノリの翔太に気を良くした今井が最後まで負けた人は罰ゲームをしようと言い出した。
「じゃあ、負けた人はここで自分の好きな人を言うってのはどう?」
「ちょっと、三花!!」
真っ先に声を上げたのは春野だった。春野は少し涙目になりながらブンブンっと首を振る。
そこまで拒否するってことは春野は好きな奴がいるんだな……。
クラスの中で春野が特定の男としゃべっているのを見たことがない。
俺は隣の席だから春野と言葉を交わすことも多い。
もしも、春野の好きな奴が俺だったら……。
どうしたって自分に都合のいいように考えてしまう。
「あはは。嘘だって。それにあたし彼氏いるし、罰ゲームになんないじゃん?」
「今井って彼氏いたんだ?」
俺が尋ねると今井はうんうんっと頷いた。
「高1の時から付き合ってるからもうすぐ1年かな」
「へぇ。彼氏っていくつ?」
「18歳。今高3」
「一つ上か」
「そそ」
「春野は?彼氏いんの?」
俺は隣に座る春野にそう尋ねた。
この話の流れなら聞いても不自然ではないだろう。
「私はいないよ。……九条は?」
「俺もいない」
「そっか」
ホッとしたように表情を緩めた春野。
すると、目の前に座る今井が翔太の顔を覗き込んだ。
「ていうか、さっきから大人しくない?山上アンタどしたの。具合でも悪いわけ?」
今井の言葉に翔太を見る。珍しく顔をしかめて複雑な表情の翔太に首を傾げる。
どうしたんだ。さっきまであんなに元気だったのに。
「え……、もしかして山上君って三花のこと?」
春野の言葉に「はっ?」と思わず声が漏れた。
翔太が今井のことを……?え、まさか……。
「え。山上ってあたしのこと好きだったの?」
今井が驚いたように尋ねると、翔太は唇を尖らせた。
「ちょっといいなーとは思ってた。しゃべりやすいし、気遣わなくていいし。うまくいったらいいな……って感じでした……」
尻つぼみになっていく翔太の声。それに比例するように「マジか~!全然わかんなかった!」と大声で笑う今井の声。
ほぼ告白に近いことを言われたというのに、今井は努めて明るく振舞う。
「でも、気持ちは嬉しい。山上、ありがとう」
「いや、ちょっと待てよ。まだ好きってとこまではいってなかったぞ、多分」
「まあ、これからも友達としてよろしくね」
「……つーかさぁ、俺負けてねぇのに罰ゲームみたいになってね?」
不満そうに唇を尖らせた翔太に、俺達はゲラゲラと笑い合った。
二人は部屋に入るなり自分たちの部屋との比較を始めた。
こっちのほうが部屋が広いとか風呂の場所が違うとか洗面台が新しいとか部屋のあちこちを勝手に開けて不平不満を漏らす。
もちろん、今井が。
春野は緊張した様子で今井のあとをついていく。
「つーか、女子2人からいい匂いすんだけど。やべー」
「バカ。あんまジロジロ見んな」
翔太が二人の姿を遠慮なく見続けるのを俺は牽制する。
もちろん、翔太は俺の気持ちを分かっているし春野を狙っているとは考えづらい。
それでもいくら仲のいい翔太とはいえ、好きな女のことをジロジロみられるのは良い気がしない。
「お前、変なこと考えんなよ」
「分かってるって。さすがに押し倒したりはしないって」
「当たり前だろ」
一通り見終わると、二人はベッドに腰かけた。
俺の隣に春野が、翔太の隣に今井が座る。
「ねえ、あたしウノ持ってきたんだけどやんない?」
「おー、いいね!やろうぜ」
ノリノリの翔太に気を良くした今井が最後まで負けた人は罰ゲームをしようと言い出した。
「じゃあ、負けた人はここで自分の好きな人を言うってのはどう?」
「ちょっと、三花!!」
真っ先に声を上げたのは春野だった。春野は少し涙目になりながらブンブンっと首を振る。
そこまで拒否するってことは春野は好きな奴がいるんだな……。
クラスの中で春野が特定の男としゃべっているのを見たことがない。
俺は隣の席だから春野と言葉を交わすことも多い。
もしも、春野の好きな奴が俺だったら……。
どうしたって自分に都合のいいように考えてしまう。
「あはは。嘘だって。それにあたし彼氏いるし、罰ゲームになんないじゃん?」
「今井って彼氏いたんだ?」
俺が尋ねると今井はうんうんっと頷いた。
「高1の時から付き合ってるからもうすぐ1年かな」
「へぇ。彼氏っていくつ?」
「18歳。今高3」
「一つ上か」
「そそ」
「春野は?彼氏いんの?」
俺は隣に座る春野にそう尋ねた。
この話の流れなら聞いても不自然ではないだろう。
「私はいないよ。……九条は?」
「俺もいない」
「そっか」
ホッとしたように表情を緩めた春野。
すると、目の前に座る今井が翔太の顔を覗き込んだ。
「ていうか、さっきから大人しくない?山上アンタどしたの。具合でも悪いわけ?」
今井の言葉に翔太を見る。珍しく顔をしかめて複雑な表情の翔太に首を傾げる。
どうしたんだ。さっきまであんなに元気だったのに。
「え……、もしかして山上君って三花のこと?」
春野の言葉に「はっ?」と思わず声が漏れた。
翔太が今井のことを……?え、まさか……。
「え。山上ってあたしのこと好きだったの?」
今井が驚いたように尋ねると、翔太は唇を尖らせた。
「ちょっといいなーとは思ってた。しゃべりやすいし、気遣わなくていいし。うまくいったらいいな……って感じでした……」
尻つぼみになっていく翔太の声。それに比例するように「マジか~!全然わかんなかった!」と大声で笑う今井の声。
ほぼ告白に近いことを言われたというのに、今井は努めて明るく振舞う。
「でも、気持ちは嬉しい。山上、ありがとう」
「いや、ちょっと待てよ。まだ好きってとこまではいってなかったぞ、多分」
「まあ、これからも友達としてよろしくね」
「……つーかさぁ、俺負けてねぇのに罰ゲームみたいになってね?」
不満そうに唇を尖らせた翔太に、俺達はゲラゲラと笑い合った。