初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
お父様とお母様に合流する為に動こうとしていた時、私はいつの間にか背後に来ていたノーマン様に呼びかけられたのでした。


「シャル、久しぶりですね……」

ご自分から声をかけてこられたのに、それだけ
言うとノーマン様は黙ってしまわれました。

 
ノーマン様はブロンドの輝く髪と明るい緑色の瞳の、お顔立ちが大変整った御方でした。

私より2歳年上で、王立学園の騎士科をご卒園されて王立騎士団に入団し、第3騎士隊に配属されました。

第1騎士隊が 王宮、王族の守護警備
第2騎士隊が 辺境、国境の監視警備
第3騎士隊が 王都、都民の治安警備 を担当
していました。


私との結婚の為ノーマン様は退団され、領地経営を学ぶ予定でしたので、貴族子息でありながら、平民出身者の多い第3騎士隊所属だったのです。
 
第3の濃紺の隊服は、ノーマン様にとても良くお似合いでした。
見目麗しく、凛々しい騎士様のノーマン様は理想的な婚約者だと、ずいぶんと私は友人のご令嬢方から羨ましがられたものです。

 
ですが、お互いに3年の時を経て……
間近でお顔を拝見致しますと。

薄っぺらな生地のサイズの合っていない貸衣装。
パサパサでくすんでしまった金の髪。
暗く沈んだ緑の瞳。
肌も張りがなく、顔色も冴えていません。
それらが今の彼の生活が荒んだものであることを語っていました。

こんな状態の彼をパートナーにして、王宮の夜会に連れてくるなんて、マダムの思惑が透けて見えるようでした。


友人達との話のネタに、私とノーマン様の再会をセッティングしたのでしょうか?

 
ノーマン様はご自分が笑われる側の人間になってしまったことに、気付いていらっしゃるのでしょうか?
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