初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
王子殿下のご遺体は確認出来ていないと、皇太子殿下は仰られましたが現在どちらにいらっしゃるのか、監視は続けておられるのでしょう。

ペロー嬢の墓前に、10日に一度花を手向ける そのお姿は確認されているのですから。
その死を一生背負い続ける、とも言われました。

 
王太子だったアーロン王子殿下は何もかも手に
されているように見えたのに。

国王としての輝かしい未来
優秀で信頼できる側近
強力な後ろ楯になる完璧な婚約者
そして愛しい恋人

……この中で本当に手にされていたものは、
ひとつもなかったのです。


決められた婚約者に惹かれていたのに、その力を恐れた。
言うまま、望むままにされてしまう事に抗ったのは、ご自分がコントロールされることに我慢が
出来なかったから。
惹かれているからこそ、我慢が出来なかった……


 
私は。
私は、ノーマン様が仰るまま、望むまま。
彼にコントロールされても、
愛そうと努力しました。
本当は。
泣きたかった。
あのカフェで、あのおふたりの前に飛び出して。
私の努力を。
返してと叫びたかった。

ブライトン家の為。
解消にした理由をそのように言い張り。
話し合いでは感情的にならず。
ちっぽけな自尊心を守る為に。
平気な振りして。
笑って。

そして、逃げ出した。


 ◇◇◇


今まで通りの顔をして毎日を過ごしていました。
ですが、心の中はぐずぐずで。

以前は誰にも気持ちを悟られるのは嫌でした。

今は……誰かにこの苦しさを判ってもらいたい、
本当に言いたかった言葉を聞いて欲しいと、
思いました。


『話すことで整理が出来る』

その通りだと思いました。



3回目のお誘いがあり、エドガー様がお迎えに来てくださったのは
前回のお茶会より1ヶ月余り後の事でした。
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