初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
「たった2日です
 2日であの女は閣下を魅了した
 気を付けていたのに、私は閣下をお護り出来なかった!」


『エドガーは叔父上の護衛騎士だったんだ』
小さな声で殿下は教えてくださいました。


「事が発覚したのは閣下がご自分で、ご自身の目を潰したからです
 公妃様が邸にお戻りになる日の朝、凄い叫び声がして、私が慌てて駆けつけた時には、閣下は あの美しい翠の目を潰していた」

「ご自分で?」

「閣下は、この目がいけないのだと、
 クリスティンの瞳を見てしまったら訳が
わからなくなってしまった
 もうクリスティンの姿を見たくないから
潰すしかないと」

「……」


私は何も言えませんでした。

殿下とエドガー様からは怒りと悲しみ、そして
後悔が感じられて、不用意で無神経な慰めなどを
言ってはいけないと、思いました。


「まず医師を呼び、クリスティンを拘束して皇宮に知らせました」

「叔父上の邸は大変な騒ぎになっていて、駆けつけた俺はどさくさに紛れ、
 皆に止められない内にクリスティンを殺してやろうと、拘束した部屋へ飛び込んだが、あの女は逃げ出した後だった
 既に皇弟邸の使用人何名かと警護の騎士、出入りの商人などが魅了されていて、こちらの混乱に乗じて逃げられたんだ」 

殿下は未だに悔しそうに拳を握られました。
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