初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
面白くなかった。
俺は兄達と仲良くしたかった。

俺の場所を奪っていることに気づかず、笑いかけてくるシャルがうとましかった。


愛想良くしないと大人達に叱られるから、
仕方なく優しい振りをしただけだ。

それなのに鈍感なシャルは俺を選んだ。
選ばれたことでディランに『ざまあみろ』と
思ったけど、喜びはなかった。


俺は選ばれるより選びたかった。

俺の家とシャルの家は同じ伯爵位だったが、内情には差があった。

財力と人脈をシャルの父親は持っていた。
俺の親父はシャルの父親に強く出られなかった。
母親同士が親友だからと、両家は親しくしてるように見えたけど。


ガルテン伯爵の愛娘が望むのなら、差し出すしかない。

俺は自分が実家の生け贄にされたのだと、諦めた。



シャルに会えたら何を話そう。

彼女に対して捻れた感情があったこと。
帝国に行ったシャルに会う為に何度も旅券申請
したけど、全部書類不備で却下されたこと。
あれはシャルの父親が裏で手を回していたんだよな。

初めから全部。
隠してた気持ちを全部。
本当の俺の話を聞いて貰おう。


今からでも遅くはない。

月は俺の願いを叶えてくれるはずだ。
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