レンカレ

彼氏と別れたばかりの休日の過ごし方

シュンスケと別れると決めたけど
シュンスケはミカコとの電話を切った直後、チカの部屋にやって来た。

「チカ、開けてよ!
お願いだから。
開けないなら自分で開けるよ?」

暗証番号を知ってるから簡単に入ってこられるのはわかってたけど
自分から開けるのが癪に触ってチカはそのままなんの返事もせずにソファでコーヒーを飲みながら
玄関で叫ぶシュンスケの声を掻き消すために大好きなKPOPを流して雑誌を読みはじめた。

案の定、シュンスケはしばらくすると自ら鍵を開けて部屋に入ってきた。

「昨夜はどこ行ってたの?ミカコんとこ?
あれからここに来たけど帰ってなくて心配したよ。」

シュンスケは確かにカッコいいし、優しいんだけど
チカは何度もこの見せかけのカッコよさに騙されてきた。

優しいけどそれはチカだけじゃなく
シュンスケは世の中の全ての女の子に優しい。

そしてちょっと甘い言葉で囁かれると下半身がいうことを聞かなくなるのがシュンスケだ。

「もう終わりにしよう。
疲れちゃった。

もう来ないで。暗証番号も変えるから。」

チカはきっとまた許してくれるとシュンスケは思っていた。

とにかく誠心誠意謝ってこの場を何とか切り抜けるしか無いと思った。

チカに飽きてるわけじゃない。

それにチカは特別なのだ。

なぜならチカは初めてシュンスケの方から好きになった女の子だったからだ。

今までは女の子から声をかけられて何となく付き合ってきたシュンスケだが、
自分の働いてる店にやってきたチカを見た時、カミナリに打たれたみたいに一目で恋に落ちた。

チカとはいずれ結婚したいって思っているのに
シュンスケの身体は心とは別物みたいに浮気を繰り返してしまう。

今まで付き合った彼女と別れたのも全てシュンスケの浮気が原因だった。

そんな自分が嫌でたまらないが簡単に理性が本能に負けてしまい、どうにも歯止めが効かないのだ。

「チカ〜、ホントごめん!もう絶対しない!
てか酒止めるよ。
オレ本当酒入るとさ、なんか下半身ユルくなっちゃって…どうにもならないっていうか…」

チカは呆れて返す言葉も見つからないが、ハラワタは煮えくりかえっている。

「馬鹿なの?
昨日はまだ飲んで無かったじゃない!

しかもお酒飲んだらまた浮気するってことでしょ?

何度同じことすれば気が済むワケ?

結局、シュンスケは私だけじゃダメってことでしょ?

もうさ、病院で診てもらった方がいいんじゃないの?」

「本当にゴメンて。
今度こそもう本当に絶対しない!
だから許してよ。」

チカはもうシュンスケの顔を見てるのも辛かった。

一緒に居たらまた押し切られてしまいそうで怖かった。

「とにかくシュンスケとはもう無理だから。」

シュンスケは得意の土下座をしてみせるが
チカはもうこの土下座にもうんざりだった。

チカはシュンスケを置いて外に出ようとしたがシュンスケに腕を掴まれて無理矢理抱きしめられる。

チカは必死で抵抗したが、シュンスケは抱きしめたまま離そうとしない。

「チカぁ。
オレいつだってチカが1番大事だし、チカのこと大好きなんだよ。わかってよ。
別れるとか無理だから。」

シュンスケは抱きしめる手を強めて泣きそうな声でそう言った。

「苦しい。離してよぉ。」

「ヤダ、チカが許してくれるまで離さない!」

シュンスケはいつもそうだ。

甘え上手でチカが1番だと言うが
1番てことは2番も3番もいるってことだ。

「もう絶対ヤダ!シュンスケとは別れる!」

シュンスケはチカに強引にキスしてくる。

「好きだよ、チカ。マジで許して。」

そう言いながらチカのTシャツの中に手を入れてきた。

また流されそうになってる自分に気付いて
これではダメだとチカは決心する。

チカはシュンスケの隙を狙って思い切りその手を跳ね除けた。

「信じらんない!他の女の子触った手で触んないでよ!」

チカの今まで見たこともない強い態度に
シュンスケはかなりビビってしまった。

「チカ、ごめん。待って、行かないで。」

チカは財布と携帯だけ持って慌てて家を出る。

流されるものかと意気込んで家を出たが
ノーメイクだし、ヨレヨレのTシャツとスウェットパンツに色気のないサンダルですぐにも家に戻りたかったが、まだシュンスケが居るだろうし
とりあえずミカコに助けを求めた。

「ミカコ、ゴメン。迎えに来て。」

「えー?何?忙しいんだけど!」

締切の近いミカコはそれどころではなかったが
半泣きのチカを放っておけなくて
初めての連載を勝ち取った時にご褒美で買った赤い中古の軽自動車ですぐにチカを迎えに行った。

「うわー、何そのひどい格好!とにかく乗って!」

「ごめん。」

チカは申し訳なさそうに車に乗ってミカコの顔を見ると涙が込み上げてきた。

「シュンスケ来たの?」

「うん、アイツやっぱり最低だった。」

ミカコは頷いてチカを自分の家に連れ戻った。

「マジで締め切り近いからさ、化粧して私の服なんでもいいから好きなの着て遊んで来な!」

「え?話聞いてよぉ。」

「無理!やっと来た読み切りの仕事なんだから締め切り間に合わないなんて事になったらシャレにならないんだ。
だからさ、例のリョウってレンタル彼氏、今予約したから遊んできて!」

思いもよらぬミカコのお節介にチカは朝の裸で眠るアラタのことを思い出した。

「は?ちょっとー、なんでアイツ呼んだの?

また勝手に人の携帯触って…。

朝まで一緒だったのにまた呼んだらしつこいとか思われるんじゃ…」

「嫌だったら来ないでしょ?
ほら、マサのカフェ指定したから行ってきて。」

「えー、よりにもよってなんでマサのカフェなのよー!」

「そこしか思い当たらなかったの!
さ、早く行って!こっちはマジで時間ないの!」

ミカコに言われて仕方なくチカは支度を始める。

「これ借りていいかな?」

チカは絶対に自分では買うことの無いちょっとセクシーな普段とは違うワンピースに袖を通した。

ミカコの服はどれもみんなセクシー路線なので中でもおとなしめの服を選んだが、少し胸の開きが気になる。

「ヤバっ!チカ胸大きいから私より全然似合う。
それあげる。めっちゃエロ可愛い。

バッグはこれ持ってって。
あと…靴は私のじゃちょっとキツいか?
でもこのミュールなら多分履ける。

これ履いて。」

ミカコが貸してくれた一式でチカはミカコの家から5分で行けるミカコと共通の友達であるマサが経営するカフェに行った。

「アレ?チカ⁈ヤバっ!
めっちゃ大人じゃん!てかミカコの服だろ?」

「わかる?」

「チカはあんまりそういう色っぽいの着ないだろ?
滅多にスカート履かないしな。
ミカコはそういうのに憧れて女っぽい服買うけど
アイツの胸無いからさ。似合ってないんだよ。」

マサはチカたちよりも5つ年上でその昔、まだ10代の頃のミカコと付き合ってたが、今では気の知れた仲のいい友達になった。

別れた経緯はなぜかミカコもマサも話さなかった。

チカはマサのことをいい男だと思っていたからミカコが別れたと言った時、自分のことのように泣いた。

理由はいくら聞いても話さなかった。

ただミカコは泣いてるだけでチカはあんなに泣いたミカコを後にも先にも見た事がない。

ミカコはその後すぐに不倫の恋をして酷く傷ついて恋をしなくなった。

マサはそのことに少し責任を感じている様にチカには思えた。

「もしかして待ち合わせ?男?

てかシュンスケ?」

マサはミカコ同様、シュンスケが嫌いである。

不誠実を絵に描いたような男といつも言ってる。

「あー、アイツね、また浮気して別れることにしたから。」

「アイツも懲りないヤツだなぁ。
でもいい判断だ!あんな男にチカは勿体ない!
チカはもっとチカを大事にしてくれるヤツじゃないとダメだ。
だいたいチカは男見る目が無さすぎなんだよ。

今日の輩もオレがちゃんとチェックしてやるからな。」

マサはまるでいつもチカのお兄ちゃんみたいでチカはマサと話すといつも決まって説教されるがそれもなんだか心地よかった。

そして扉が開いて朝まで一緒に寝ていた男、鷺坂アラタがやってきた。
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