漆黒の女帝
同期たちが不思議そうに、そして羨ましげに北斗に訊ねる。北斗は「個人的に集中できる方法を見つけたんだ」と同期たちに笑いかけ、着物を織るために布を手に取る。

カタカタと機械が音を立て、誰かが袖を通す着物が作られていく。北斗が気が付いた時にはもう辺りは薄暗くなっており、作業場には北斗一人しかいなくなっていた。集中しすぎて同期たちが出て行ったことなど、全く気が付かなかった。

「……そろそろ夕飯の時間だったな。一旦中断しよう」

続きはまたみんなが寝静まった後にすればいい。そう思いながら北斗が立ち上がった刹那、辺り一面がまるで深海のような暗闇に包まれる。

「は?」

何が起きたのか、北斗は全く理解できなかった。脳が追いつかない。否、追い付きたくないと思っている。

「やっとお前の元に来れた。まるで百年も時が経ったように感じたぞ」

暗闇の中から凛とした声が響いた刹那、あの夢の女性が姿を見せ北斗の体が震え出す。辺りを目だけを動かして逃げ場を探すも、作業場は暗闇に包まれてどこにも逃げることができない。
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