漆黒の女帝
昼間は何の夢を見ることもなく、北斗は穏やかな気持ちで目を覚ますことができる。夜に眠れないためなのか、体は深い眠りに落ちているようで、ただ優しい闇が北斗の脳を包んでくれる。

「昼間にしっかり眠れるように特訓しないとな」

そう決意した北斗は、その日から着物の折り方だけでなく睡眠の研究もするようになった。どのようにすれば早く、そして体を休めることができるのか色々な方法を試していく。そうしている間に、季節は巡っていった。

夜に眠れなくなって一年近くが経った頃には、北斗は昼間の休憩時間の間眠るだけで体力や疲れが回復し、集中できるようになっていた。眠れない長い夜の時間、こっそり作業場に足を運んで練習をする。すると、着物を織る腕はメキメキと上達していった。

「北斗、お前すごく成長しているじゃないか」

師匠が驚きつつも嬉しそうに言い、北斗は「ありがとうございます」と頭を下げた。一人前にどんどん近付いているような気がして、手が「早く着物を織りたい」と言いたげに疼く。

「お前、ちょっと前まで下手くそだったのに急にどうしたんだよ?」

「いつも眠たそうで、師匠に怒られてばっかりだったのによ」
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