ヒロイン覚醒要員である黒幕お父様の暴走を阻止します 〜死なないために愛嬌を振りまいていたら、不器用な愛情過多がとまりません〜



 兜の目元から窺える赤い瞳と、はらりと流れた亜麻色の髪。
 気を取られている間に剣の打ち合う音が聞こえてくる。私は瞬きをしながらゼノの姿を注視した。

(なんか、あの顔周り見たことあるような……)

 先ほどの穏やかな目つきから一変、相手を前にしたときのゼノは、鋭く射るような視線を送っている。

(見覚え……アリアとしての記憶じゃないなら、前世?)

 兜の奥の赤色がきらりと輝く。
 兜、亜麻色の髪、赤色の瞳。そのシルエットと色合いがどうしても引っかかる。

(あ、あーーっ!!)

 やっと既視感の正体を突き止めた私は、堪らず立ち上がってゼノを凝視した。

「アリアちゃん、どうかした? あのゼノって子がなにか気がかり?」

 わなわなと震えた私に声をかけたルザークは、ゼノの方向に目をやりながら尋ねてくる。

「え、えっと……」

 うまく言葉を繋げられずにいると、ゼノが相手の剣を落としたことで模擬戦の勝敗は呆気なく決した。

 なんだか頃合を見て簡単に勝利を取ったように見えなくもないけれど、それよりも私の意識はあることに集中する。

(ゼノ…………って、もしかして、ギルバートと敵対する皇帝の妾子・ゼノクス!?)

 模擬戦が終了し、兜を取ったゼノの顔を遠目に見つめながら、私はあるキャラクターのことを思い出した。
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