22時からはじまる恋物語

「別の女と行ってたんだよ!?あり得なくない!?」

バシン!とファイルをテーブルに打ち付けながら、半泣きで怒りをぶつける。

ごめんファイル。君には何の罪もない。

「あちゃー。いやー桜井の彼氏、ほんとクズだね」
「クズって言わないで!!ほんとはすっごく優しいんだよ!?」
「はいクズ彼に夢中な彼女の典型的セリフ頂きましたー」
「だーがーざーぎー」

スラスラとボールペンを走らせる隣のスーツ姿の男、高崎君の腕を掴み揺さぶるものの、「ちょ、報告書ぶれるって」と冷たくあしらわれる。

...わかってるよ。
あいつが側から見ても、とーってもクズな彼氏だってこと。

大学生になって初めてできた彼氏。
つまり、わたしの初めての彼氏。
そこそこイケメンで優しくて、女の子の扱いも慣れてて。
女子校育ちで男性免疫皆無だったわたしは、そりゃ簡単に夢中になったよね。

付き合い始めてすぐに、あれ?もしかして浮気されてる?って感じることは多々あったけど、信じたくなくて目を瞑って。

...浮気されてもいい。ちょっとした遊びならいい。

わたしのところに戻ってくれたら、それでいい。

...なーんて思いながら、あっという間に過ぎた一年。
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