好きとか愛とか
付き合ってくださいとか、そういうやり取りを経て彼氏彼女になると思っていたけど、好き合っていることをお互いが知った時点でも成立するものらしい。

けれど、それだけではなんだか腑に落ちなくて、

 「先輩…あの、私と、付き合ってくれますか?」

壱矢に向き合って、そんなことを訊いていた。
驚いた壱矢が、目を真ん丸にして私を見つめる。
レジ袋を膝の上にのせると、私の両手を取って微笑んだ。

 「俺の好きな女はお前しかいない。よろしくお願いします」

自分からこんな申し出をするのが初めてだったものだから、よく考えずこの場面を選んでしまったことに、急に恥ずかしさが込み上げた。
真っ赤になって俯いた私を、壱矢はからかうこと無く見つめていた。

しばらくバスに揺れて、見慣れないバス停で降りた私たちは、泊まる場所目指して歩いていく。
多分、ビジネスホテルとかではなく、ファッションホテルだろう。
記帳を求められるような場所はあとあとの事を考えると避けたいし、高校生が泊めてもらえるとも思えない。
わざわざ人を欺いてまで泊まろうとも思えないし、あまりに利己的すぎる。

 「簡単に泊まれるとこってここくらいなんだよなぁ…ごめんな、壱」

ファッションホテルに入り、部屋のソファに座った壱矢が申し訳なさそうに謝った。

 「布団で眠れる場所があるだけでもありがたいですから」

こういう場所がなければ野宿だったかもしれないし、それもどうなんだとなれば家に帰ることになっていたかもしれない。
それに比べればファッションホテルは天国である。
それに前に一度、のっぴきならなかったとはいえ一度入っているのだから抵抗もない。
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