好きとか愛とか
けど、壱矢が抱くイメージの女なんかじゃない。
私はただの、

 「肩肘張った女です」

 「まぁな、つんけんして何でだよって思ったよ」

 「でしょうね」

そうしてきたのだから、壱矢がそう思っても責められない。
つんけんすることで私は家族というものから距離を取っていたのだがら。

 「けど、そこの根っこは何なんだろうって気になった。お前は忘れてるだろうけど、越してきてしばらくは笑ってたし普通に肩肘張らない女の子だったよ」

言われて心底驚いた。
壱矢はその私を覚えていた、ということか。
私はもうすっかり忘れていた。
そういえば引っ越してきた当初は、私もせめて嫌われないようにと意識していたのは確かだ。
母が愛羅と私を比べ始めるまでは…。

 「前に、お前が家にいたくないことも分かってるって言ったことあっただろ?」

 「はい」

 「………愛羅だよな、原因」

たっぷり時間を取った壱矢が、元凶の一部を口にする。

 「いぇ、そういうわけでは…」

確かに愛羅が絡んでいることは否定しない。
比べられる対象なのだから、愛羅と言えば愛羅なのだが、それだけではないため、肯定できなかった。

 「愛羅と壱を比べる喜美子さん…二人にだよな」

はっきり口にされると否定も出来ない。
けれど、認める言葉を吐き出すのもみっともなく感じた。
母親からの愛情が足りないと駄々をこね、義理の妹には母親を取られたと卑屈になっただけのことだ。
甘えたな自分など、どうして見せられるだろう。
私は黙って、壱矢の胸に顔を埋めていた。
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