好きとか愛とか
もちろん義理の妹にはちゃんとおめでとうを言って。
それからはまたもとの通りの、家族ごっこをしている。
ただ、今日だけはちょっと違って壱矢と二人ではなかった。

 「壱?悪いんだけど今日愛羅ちゃんのお迎えお願いできない??」

いつもよりうんと早く起きてきた母が、両手を合わせておねだりしている。
有名な女子中学に通う愛羅はいつも母が送り迎えをしている。
なんでもずっと恭吾さんが送っていき、帰りは仕事で行けないため祖父母がしていたらしい。
奥津家の祖父母も高齢なため車の運転は自信がないということで、再婚直後からは母にバトンが回っていた。
まぁ可愛い一人娘のためだろうが、なかなかの箱入りだ。
女子中学に通う清楚な女の子なら、まぁ心配も山ほどあるのだろう。
その代役のお願いである。

 「私が?」

 「お母さん今日、おばあちゃんの病院に付き添わなきゃいけなくなっちゃって、愛羅ちゃんのお迎えに行けないのよ。いろいろ調整してみたんだけどどうしても無理でね。壱矢君も委員会らしくて行けないのよ」

 「いいよ」

おばあちゃんのことは大好きで、昔から可愛がってくれているし今もそうである。
昔と変わらない愛情を与えてくれ、私を誰とも比べない唯一無二の存在。

そんなおばあちゃんの病院ならそっちの方が優先だ。
迎えくらいお安いご用である。
義理の妹も私を‘いっちゃん’と呼び、一緒にいるたまの時間にも話しかけてくるところを見ると、そこまで嫌ってはいないらしい。
私が迎えに行くとなっても抵抗はされないだろう。

 「ほんと?よかったわぁ。じゃあ授業は三時四十分に終わるから、それまでに校門で待っててあげて?」

 「それは無理。私もその時間に終わるから行けるのはそれ以降になる」

 「じゃあ六限目早退で行ってあげられない?壱は頭もいいし、たまに一限くらい抜けても問題ないでしょ?」

 「は?」

簡単に言わないで。
そりゃ実際なんの影響もないけど。
だからって、なんでそんなことまでしなければならないのか。
過保護すぎやしないか?

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