好きとか愛とか
問題なのは、繋いだことで生じる二次災害的なことなのである。
こんなところを壱矢に思いを寄せている女子生徒に見られたら、もし付き合ってる人に見られたら、トラブルになる気しかしない。
幸い?というか、登校する時間は早いし帰る時間も遅いので誰かの目に触れることは少ないけれど、それでもゼロではない。

 「勘違いされて困る相手なんかいない。お前は?勘違いされて困る相手いんの?」

 「いません」

どこをどうひっくり返しても、私からはそんな対象出てくるわけがない。
男子はおろか、女子とだってごくごく限られた人としか話していない。

 「じゃあ問題なくね?」

 「まぁ問題はないんですけど」

そういうことでもない気がする。
かりに途中で勘違いされては困る相手が出来たとき、勘違いだからとその本人に伝えてしまっては自分の気持ちをさらすことにならないか?
恋愛偏差値の低い私には、学校の勉強より難しい。

 「いっそ俺たち付き合ってることにする?」

えっ、
なんだって!?
勘違いだけでも難題だったのに、それを上回る提案が寄越された。
壱矢の思考回路はどうなっているのだろうか。

 「どうしてですか?」

 「壱が彼女役してくれたら俺得」

俺得というところで、合点がいった。
私史上一、恋愛問題で冴えてる瞬間だった。

 「言い寄る女が減ると」

 「まぁ、手っ取り早く言うとそう」

壱矢が私と付き合ってるふりをしてメリットがあるとしたら、これしか思い当たらない。

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