大好きな先生と、月明かりが差し込む部屋で過ごした夜


 歩きながら小声で言った言葉が聞こえたらしい。

 いきなり沙也加が私に背後から抱き付き大声で反論してきた。


「沙也香は、お姉ちゃんの妹だって思ってるしぃ~」


 自分のことを名前で呼ぶ子は苦手だ。


 それに、つきあいが長くて弟と幼なじみでも、アナタを妹だなんて思ったことは一度もない。

 まさか、弟の優介と将来結婚して、私が姉で沙也加が妹に……


 いや、そんなことあり得ない。

 幼い頃から顔見知りで、居心地がいいかもしれないけど優介にアノ子は似合わないよ。

 昔から適当で発言が無責任なのは変わらないし、何でも軽く考えてる。


 ちょっと不機嫌な表情で通学路を歩き始めた私に、弟の優介が話しかけてきた。


「美優は何でも難しく考えすぎなんじゃね?」


 優介はめんどくさそうに、また細かいこと言ってる、ぐらいな気持ちなのだろう。



 そんなことより、自分の姉を呼び捨てにするってどういうこと?



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