待てない柑士にひよりあり ~年上御曹司は大人げなくも独占欲が止められない~
私は手の中にあったスマホをテーブルの上に置き、自分のお腹の下に手を当てる。
一年付き合った壮一にもあげることなく大事に取っていた初めてを、昨日の夜、柑士さんに託した。今は彼が婚約者であるのだから当然といえば当然だ。
恥ずかしかったし、少し怖くもあったけど、彼は驚くくらい優しく抱いてくれた。
親友の和美が言ったように、ああいうのを“大人の余裕”っていうんだろう、とそんなことを思った。だから安心できた面もある。
「初めてが柑士さんでよかった」
声に出してみると、本当に処女を失ったのだと実感する。
(いや、失ったのか、捨てたのか……)
「これでよかったんだよね」
そう呟いたけど、勝手に涙があふれて、いつの間にかしゃくりあげて泣いていた。