待てない柑士にひよりあり ~年上御曹司は大人げなくも独占欲が止められない~
そんなことを考えていると兄は続けた。
「でも柑士の会社、大きいだろう。NYで実績作って認められないと日本に戻ってこられなかったみたいでさ。実績って言ってもあの規模じゃなかなか目に見えるまでがな……」
そう言えば、柑士さんは長年NYにいたみたいだし、和美も最初そんなことを言っていた。
「先月やっと戻ってきて、それで、うちに来た。お前と見合いができないか、と話を持ち出した」
「……どうして?」
「それは本人に聞け。でも、正直俺は助かった。ISEZAKIと縁ができれば融資はおりやすい。そしたら会社を潰さずに済む。実際そうなった。このまま会社が軌道に乗れば、ベーカリー部門も始められるかもしれない」
それを聞いて、私は顔を上げる。
「ほ、本当?」
「あぁ。任せとけ」
兄は子どもみたいにニッと笑った。
兄も、祖父のパンが好きだった。兄は兄で、どうにかしたいと奔走してくれていたのかもしれない。