想いはグランデ より愛を込めて

しのり  部屋in

「あの〜すみません、
       そのブルーマウンテンコーヒーおいしいですよね?」



あまりにも下手で笑ってしまう、ナンパである。
でも、彼女は振り向いた。



『ええ、そうね、すみません。
           どうぞ』

彼女は、僕に気づかないで、少し後ろに下がって身を引いた。

それでも僕は続けた。

「あ、やっぱりやっぱりななみさんだ。

     僕のこと覚えてる?

      去年コーヒー注文しましたよ。

デリバリーで注文する位おいしいんです!

            ねぇ」


ななみさんは少し驚いた。表情している。
この人誰だろう?みたいな表情して様子を伺っている。僕に気づかないだけだろうか。



いや




わかった。




僕が太ってしまったからである。


ロングコビッドになって何キロ太っただろうか、
体重計も測れないほど想像もつかない位太ってしまった。
それは夏の日だった。あれから半年、
何もかも変わってしまった。あの日から会えてないから、やはり自分の想いだけが先行しまった。



それだけ彼女が目の前に現れたことが現実なのか、
それとも僕の夢の延長線なのか
はっきりとしない。


『あなた名前は何と言うの?』

ななみさんが僕に尋ねた。彼女の声色からすると、
間違いない。彼女だ。でも何かが違う夏にお会いした時はワンサイズ小さかった。何か今日の彼女は体格が大きいし、背も高く感じるし、
鼻も通っていて目つきもキリッとしている。




別人だ。と思えば別人にも思える。
しかしながら、独特の雰囲気が彼女だと結論づけたいくらい、彼女であると言える。


「ぼくはしのりです

貴女の名前は?」



『私の名前は.........言わなくても
           わかるのでしょう?』





    彼女は僕に名前を僕に告げなかった。
< 41 / 52 >

この作品をシェア

pagetop