夢物語

溜め息と共に首を横に振る猫さん。本当に面倒臭いと思っているのがひしひしと伝わってくる態度で、これ以上説明したく無さそうな彼の代わりに、その意味を自分で考える事にした。

複雑な乙女心……つまり、見つかりたくないけど、本当は見つけて欲しいと思ってる、って事なのかな。嫌よ嫌よも好きのうち、みたいな……そうなると、見つけても迷惑では無いって事だよね? でも、見つかりたくないから私が諦めるかもしれないくらい困難な課題にしてある……とか。そうなると、つまり。


「私は試されてるって、事?」


彼にどれだけ会いたいと思っているのか、どれだけ真剣に彼という存在と向き合っているのか、その答えをここで知ろうとしているのかもしれない。そう思えばなんだか納得が出来た。考え過ぎるあの子らしいといえばらしい話だ。


「そう。つまり諦めない限り長期戦になる。長く君は夢の中だ」

「そんな事出来るの?」

「所詮夢の中だから、目が覚めればいつもの朝だよ。何日経っても一日分。都合の良い話」

「……そっか。良かった」


何日も目が覚めなくて現実世界では死んでしまった、なんて事になるのなら話は別だもの。そんな事にならないのなら良かった。思う存分彼に付き合えるし、長い冒険に出るような雰囲気にちょっとワクワクしてきたかも。


「よし! じゃあまずはどこへ行く?」

「待ってって。まだ半分しか話して無い」

「え! まだ半分なの?」

「君はこの森の事を知らないでしょ? ここは本当に危険な場所だからちゃんと聞いた方が良いよ」


またしても猫さんに冷静に注意されてしまった。私はどうも決めたら即行動タイプだったらしい。慎重さに欠けるみたいだと初めて気付いた。

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