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 自慢じゃないが、千真は彼氏いない歴実年齢で、男性経験なんてもってのほか、こういった場合、どう対処するのが正しいのか、勉強しているはずもなければ、知っているはずもない。
 不意に唇から漏れる声が、自分のものなんて信じられないくらい勝手にこぼれていくのを恥ずかしいなんて思う余裕もなく、ただただ駿介に抗うこともできず、受け入れるしかない自分が怖くなる。この先、どうなってしまうのか、想像もつかなくて。

 それでも駿介の触れる手が、唇が、なぜか妙に優しくて、涙が出そうになった。
 冷たくするなら、意地悪をするのなら、最後までそれを貫いてくれればいいのに、こうやって優しく触れてくるから勘違いしてしまいそうになる。

 大狼は、服の中に手を入れてきたものの、ブラジャーで包まれた先には進んでこない。
 それに安心しているのか物足りないのか自分でも判らないけれど、でもそれをひどくもどかしく感じている辺り、もしかしたら後者なのかもしれないと思ったら、駿介の熱がうつったように身体の芯が熱くなってくる。

「お、おおがみさん……。本当に、もう……」

 やめてください。声が出ていたかは、自信がない。けれど、このままというわけにもいかない。

 駿介に流されたままなのはよくないと判っていながらもどうすることもできなくて、必死にいたずらなような愛撫に耐えていた千真だったが、駿介の手が、とうとうブラジャーの中に入ってきた瞬間、大きく目を見開いた。――そして。

「……ごめん」

 ……え?

 聞こえてきた謝罪が、背後からでなかったことに目を瞬かせる。ゆっくりと、声のほうを向けば。

「本当、ごめん」

 千真は、申し訳なさそうに口元を手で覆った旭と、ばっちり目が合ってしまった。
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