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 ロックもかかっていないスマホは、どういった経緯があるのか千真のものと同じ機種なので扱いやすい。そうでなくとも、最近のスマホはどれも構造が似たようなものではあるのだが。

「あ、お疲れさまです、賀永です。今よろしいですか? 実は、熱冷ましを買ってきていただきたくて。はい、そうなんで……きゃぁ!?」

 旭との会話に集中していた千真は、すっかり油断していた。千真の背中に、燃えるような熱さが纏わりついてきたのである。

「ち、ちょっと、大狼さん!?」

 千真は旭に聞こえないよう、声を小さくして駿介に抗議するが、駿介はそんなことはものともせず、千真の背中から離れようとしない。
 そればかりか、左手が千真のお腹から上へ登ってきて、顎を掴んでくる。

『賀永さん、どうしたの?』

 電話口からそんな旭の声が聞こえてきて、千真は慌てて、大丈夫です、と返事をしたが、内心はちっとも大丈夫なんかではない。

 ――ひっ。

 千真の顎を掴んだ駿介は、そのまま千真の頭を横に傾けると、無防備になった首筋に噛みついてきた。声が、漏れたかどうかは判らない。それくらい衝撃的で、動揺を隠しきれなかった千真は、どうすることもできず、きつく、目を瞑った。

『熱冷ましだけでいいの?』

「だ、いじょうぶ、だと、おもい、ま、す」

『? 本当に大丈夫?』

 訝しんだ旭の声に、カッとなる。短く息を吐き出して、お願いします、と一方的に通話を切るのが精一杯だった。

「あ……っ」

 するり、顎にかかっていた指先が、頬を撫でるのに、ゾクッとする。
 もう、本当に信じられない。どうして駿介は、こんなにも旭の前で千真の醜態を晒そうとするのだろう。

「お、がみ……、さ……」

「……」

 駿介の熱が、首筋から耳元に移る。吐息が熱くて、眩暈がしそうだった。

 熱を帯びた手が、頬から胸元に落ちていく。いや、と抵抗するのも虚しく、シャツのボタンを2つほど開けた隙間から、手が侵入してきて直接肌に触れる。
 恐ろしいほどに熱いのは、果たして本当に熱があるからなのか判らなくなるほど、千真は浮かされていた。駿介の唇は、相変わらず千真の耳元と首筋を行ったり来たりしていて、感覚がおかしくなってくる。
 お腹の奥が、また窮屈さを訴えてきて、どうすればいいのか判らない。
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