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(2)

 正直、最近のスマホは、あまり違いが判らない。カメラの画質に違いがあるらしいが、カメラ自体使わないのでどうでもいい。
 強いて言うなら、画面の大きさだけである。

「どれにすっかなぁ」

 小さいほうが持ち運びには便利だが、少々文字が見づらい。それを旭に言ったら、ものすごく笑われたのを思い出し、そういえばと一緒に来た同僚に視線を移す。

「なぁ。おまえが使ってるのって……」

「……え?」

 千真を向けば、千真は目をキラキラさせて、最新のスマホを見ていた。
 駿介は思わず、ぶっ、と噴き出して、片手で顔を覆う。

「な、なんですかー!?」

「なんでもねぇよ」

 ぷう、と頬を膨らませてムキになる千真は、まるで小動物のようだ。駿介はくつくつと笑いながら、そんな千真の頭をわしゃわしゃと撫でた。
 せっかくきれいにセットして来たのに、崩れてしまう。そう文句を言うより先に、手が退けられた。

「おまえも買うの?」

「買いませんよー。見てるだけですー」

 でも、いいなぁ。口から漏れた言葉ではないが、顔がそう言っている。
 今月は、かなり予算オーバーしているので、ここから先は切り詰めなければならない。旭に見てもらいたかったワンピースだが、これはこれで気に入っている。

 とりあえずは興が削がれてしまったので、しばらく告白することはないだろうが、そのうち、今度こそちゃんと旭に告白したい。そのときはまた、新しい服に身を包んで、旭を待とう。
 待っている間のドキドキは、不安もあったけれど、あれはあれで幸せな時間だった。
 それを思えば、今回のことも水に流せる気がした。
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