幸せのつかみ方
「・・・・」
「・・・・」

蝉の音だけが煩くしている。
私たちはどちらも話すことなかった。

「じゃ」と言った樹さんはここから立ち去ろうとした。
「樹さん!」
慌てて呼び止める。樹さんは振り返り、
「ん?」
と優しく返事をした。

「あの・・・私、樹さんに話したいことがあって」
「うん?」


ドクンドクンドクン。
人生でこれ程までに心臓が大きな音を立てることがあるのだろうかという程、心臓の音が耳に響いてくる。


私は俯き加減で肩で何度も息をする。


「樹さん」

顔を上げ、樹さんの顔をしっかりと見た。

樹さんの顔は優しかった。
樹さんの瞳は今までと同じように温かかった。


「樹さん、樹さんのことが・・・好きです」
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