幸せのつかみ方
その夜。
私は、なかなか眠りにつけなかった。

明日は仕事が休みだから、眠らなくても困りはしない。
でも、できるなら眠りたい。
何も考えずに眠りたい。


「ふうー」

深呼吸をして寝返りを打つ。
真っ暗な部屋。
カーテンの隙間から月明かりでそこだけほのかに明るい。
もう暗さに慣れきってしまった瞳。

止めようとしても、裕太のことが頭から離れない。




裕太のことを嫌いになりたくなかった。

裕太への愛情か家族愛か。
どちらかはもう区別がつかないくらいの長い年月を一緒に過ごしてきた。

楽しいことも、嬉しいことも。
悲しいことも、辛いことも。
いろんなことを乗り越えてきた。



でも・・・。
私は「裕太の愛しい人」じゃなかった。



今更、どうしてよりを戻すの?



那奈さんと別れたから?
那奈さんにフラれたから、私のところに戻ってくるの?
それとも一人暮らしが寂しくなった?


・・・いったい、私って何なのかしら?




どんな気持ちで裕太と別れたと思っているの?
どんな気持ちであなたとの関係を守ってきたと思ってるの?

私のところに戻ってきてくれると信じていたけれど
こんな戻り方じゃない。




裕太を恨んでしまう・・・。




裕太を嫌いにさせないで・・・。

これ以上みじめにさせないで・・・。







ほんの少しのプライドすら粉々に打ち砕くのはやめて。







・・・眠れない夜が明けるのを待った。



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