幸せのつかみ方

優しい人でひどい人

結婚する前だった。

私たちは一緒の職場で働いていた。

出先から戻ってきた裕太はたい焼きを持っていた。
近くの神社でお祭りをしていたと。
みんなにたい焼きを買ってきてくれたのだった。


そして、私にだけイカ焼きがあった。


以前、同僚たち数人で飲みに時のこと。

お祭りで何を買うかっていう話をしたことがあった。

「たい焼きが好き。でも、食べると口の中が甘くなっちゃって、絶対にイカ焼きを買ってしまう」
と私が言うのを覚えていたくれたらしい。

「みんなにはないから内緒ね」
と言われたが、一瞬開けてしまったその袋から、事務所中にイカ焼きの臭いは充満していた。

同僚たちに突っ込まれた。
「茅間さんだけ特別?」
という声も上がる。

私もちょっと意識した。
もしかして私に気がある?って思った。

そしたら、
「え?俺はいちご飴ももらいましたよ」
と近くにいた男性社員が言った。

裕太はその彼が
「りんご飴よりいちご飴が好きなのに祭りでなかなかお目にかかれない。あったら必ず買う」
と話していたのを覚えていて、たまたま酔ったお祭りので店にあったから買ってきたという。


・・・なんだ。
私だけ特別だったわけじゃないんだ・・・と少しがっかりしたのが意識し始めたきっかけだった。



< 92 / 126 >

この作品をシェア

pagetop