一途な黒川君に囚われてしまいました
樹は少し間をおいて「今月末」と小さく答えた。
「今月末ってもう三週間ないじゃない」
八月のカレンダーを見つめ、残り少ない日数を確認した。
力が抜けてソファにもたれかかる。
「長いの?」
「おそらく三年程」
目の前が暗くなり、泣きたくなった。
「そこで姉ちゃん、俺がいない間この家に戻ってきてくれないかな?」
樹はひどいことばかり言う。
私がここに戻ってくるとなると、母と再婚相手とここに住まなければならないのだ。
絶対に嫌なので首を横に振った。
「美琴ちゃん、実はママね、真一さんのお家に住もうと思ってるの」
母は反応を窺うように上目遣いに私を見つめた。
「母さんは真一さんの家に住むつもりで、そうなるとここが空き家になるんだ。重要な話っていうのは姉ちゃんにここに戻ってきてほしいってことだったんだけど、俺の異動の件で戸惑わせてしまうのがわかってたから言い出せなかった……黙っててごめん」
樹が申し訳なさそうに目を伏せた。
「ごめんって……」
ひどいよ。
ひどい__けれど、その顔を見るととても苛立ちをぶつけられない。
樹は悪くないのだ。
異動は避けられないものであることをOLである私はよく知っている。
「今月末ってもう三週間ないじゃない」
八月のカレンダーを見つめ、残り少ない日数を確認した。
力が抜けてソファにもたれかかる。
「長いの?」
「おそらく三年程」
目の前が暗くなり、泣きたくなった。
「そこで姉ちゃん、俺がいない間この家に戻ってきてくれないかな?」
樹はひどいことばかり言う。
私がここに戻ってくるとなると、母と再婚相手とここに住まなければならないのだ。
絶対に嫌なので首を横に振った。
「美琴ちゃん、実はママね、真一さんのお家に住もうと思ってるの」
母は反応を窺うように上目遣いに私を見つめた。
「母さんは真一さんの家に住むつもりで、そうなるとここが空き家になるんだ。重要な話っていうのは姉ちゃんにここに戻ってきてほしいってことだったんだけど、俺の異動の件で戸惑わせてしまうのがわかってたから言い出せなかった……黙っててごめん」
樹が申し訳なさそうに目を伏せた。
「ごめんって……」
ひどいよ。
ひどい__けれど、その顔を見るととても苛立ちをぶつけられない。
樹は悪くないのだ。
異動は避けられないものであることをOLである私はよく知っている。