一途な黒川君に囚われてしまいました
大切なことを気軽に話せなかったのは、母の存在を頑なに拒んでいたせいだ。
今度は申し訳ない思いでいっぱいになる。
「空き家になると家が傷んじゃうでしょう。美琴ちゃん、戻ってきてくれないかしら?」
「私が戻らなかったらここはどうなるの?」
「借家にするか手放すか……でも思い出の詰まった場所だから手放したくはなくて」
母がすがるような目を向ける。
母の願いを聞くのは癪だが、この家は父との思い出が詰まった場所。それに正常だった母とも__。
「俺も姉ちゃんに住んでもらえると嬉しい」
もし私が拒めば、樹は安心して行けないだろう。
それに私がここに戻ってこなければ、樹の帰って来る家がなくなる。
「……そんなの……戻るしかないじゃない」
「いいの姉ちゃん?」
「だって私が戻らなきゃここなくなっちゃうんでしょ……戻って来るわ」
樹を見つめ約束した私だったけれど、これがまさか平和な日常に大きな変化を与える決断になるとはこの時は思いもしなかった。
今度は申し訳ない思いでいっぱいになる。
「空き家になると家が傷んじゃうでしょう。美琴ちゃん、戻ってきてくれないかしら?」
「私が戻らなかったらここはどうなるの?」
「借家にするか手放すか……でも思い出の詰まった場所だから手放したくはなくて」
母がすがるような目を向ける。
母の願いを聞くのは癪だが、この家は父との思い出が詰まった場所。それに正常だった母とも__。
「俺も姉ちゃんに住んでもらえると嬉しい」
もし私が拒めば、樹は安心して行けないだろう。
それに私がここに戻ってこなければ、樹の帰って来る家がなくなる。
「……そんなの……戻るしかないじゃない」
「いいの姉ちゃん?」
「だって私が戻らなきゃここなくなっちゃうんでしょ……戻って来るわ」
樹を見つめ約束した私だったけれど、これがまさか平和な日常に大きな変化を与える決断になるとはこの時は思いもしなかった。