一途な黒川君に囚われてしまいました
黒川君を見つめてしまう。

「俺、出ようか?」

心細さが伝わるほど、今の私は弱々しい表情なのだろう。

「じゃあ……確認して知らない人だったらお願いしてもいい?」

「もちろん」

その一言は今ひどく心強い。

私は立ち上がりインターフォンの画面を覗いた。

そこには、橋本さんの姿が映っている。

「どうして……」

橋本さんが訪ねてくる意味がわからず動揺してしまう。

「俺が話てもいい?」

いつの間にか黒川君はすぐ後ろにいて、私を不安げに見下ろす。

少し迷った後「最初は私が出るね」と、言って通話ボタンを押し「はい」と答えた。

その声は緊張で震えている。

「こんばんは、今井さん。橋本です」

「……はい、どうされましたか?」

「今日いいお酒をいただきまして、俺の家で一緒に飲みません?」

「……」

橋本さんと家飲みをするような仲では決してない。

むしろ避けたい人物である。

「今井さんのお宅でもいいですけど」

橋本さんは画面に顔を近付けニヤリと笑った。

その顔がいやらしくて固まってしまう。
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