【短編版】誕生日に捨てられた記憶喪失の伯爵令嬢は、辺境を守る騎士に拾われて最高の幸せを手に入れる
 馬車は整地されてない石ころで荒れている坂道を下って、辺境の地へとたどり着く。
 御者が馬車の扉を開き、降りるようにリーズに伝えた。

(降りろ、と言うの? ここで?)

 周りはただの森で、四方どこを見ても家や街は見当たらない。
 リーズが地に足をついた瞬間、御者は何も言わずにさっと席に乗るとそのまま馬車を操って去っていく。

「えっ?! 待ってください! どこに行くのですか?!」

 馬車ははるか遠くに走っていき、やがてその姿も見えなくなった。
 リーズは自分の置かれた状況がわからず、まわりをもう一度見回す。

(え? 私、置いて行かれてしまったの?)

 リーズは心の中でそう思うが、確かな情報ではないためその場にとどまることにした。
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