しみ





 毎朝同じ時間に目が覚める。目覚ましがなくても起きられる、それがわたしの特技だったりもして。


 けれど昨日は眠れなかった。この日が来るとわかっていて、いまこうしているのは私が望んだことだったのに。一睡もできないなんてバカみたいだ。


 隣りに彼がいる。この現実がしあわせで、かなしいなんて。


 昨晩彼が眠った後、寝顔を眺めながら考えてみたけれど、堂々巡りのままだ。


 なんで彼は別れることを選んだのか。なんでわたしも『わかった』なんて聞き分けのいいふりをしてしまったのか。


 わたしのずるさが招いた結果だ。


 「将来の為に留学したい。これからのこと、どうする?」なんて、試すような言い方をしたから。いずれ留学したいとは話していたけれど、彼もその日がこんなに早く来るなんて思ってなかったんだろう。それも大学3年の、進路や就職先を決めるのに大事な時期に。


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