太陽の寵愛
一時間ほど待ち、ようやく一の番がやって来た。村人たちが寄付してくれた銭を賽銭箱に入れ、鈴を鳴らす。そして二回手を叩いて頭を下げた後、村人たちの願い事を一人ずつ心の中で言い、神様に伝えていく。

(三郎(さぶろう)のじいちゃんは、孫が元気に成長していきますようにと願っています。おとよさんは、お父さんの病気が治ってほしいそうです)

村人たちの願い事を言った後、一も願い事を神様に伝える。手にグッと力が入った。

(お母さんの病気を治してください。そして、弟たちにお腹いっぱい食べさせてあげたいです)

二つも願い事をするなど、神様に卑しいと思われてしまったかもしれない。だが、一はどちらか一つの願い事にしようと思ってもどちらかを切り捨てることはできなかった。

今から五年前、一の父は病によりこの世を去ってしまった。そこから母と二人で弟たちを養うために頑張ってきたが、母も過労により倒れてしまった。絶望の海に一は突き落とされてしまったのだが、家族のために働くしかなく、その絶望に浸っている暇などなかった。
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