太陽の寵愛
(神に願えば、村は少しでも栄えるのかな?弟たちはお腹いっぱい食べれて、母さんの病気は治るのかな?)

緊張と期待を胸に一は鳥居をくぐる。鳥居をくぐる際に、彼の頭の中には「願い事、頼んだよ!」と見送ってくれた村人たちの顔と、布団の中から体を起こして手を振ってくれた母、そして自分の代わりに畑仕事をするための桑などを持って「行ってらっしゃい!」と言ってくれた弟たちの笑顔だった。

「全員の願い、きちんと神様に聞いてもらわないとな!」

拳を握り締め、一は歩いて行く。周りを見れば、自分と同じく旅人と思われる人たちが真剣な表情をしながら歩いている。この人たちにも叶えてもらいたい願いがあるのだ。

日常の世界から神聖な世界を結ぶ架け橋と言われている宇治橋を通り、手水舎で手を清める。そして皇大神宮に向かうと、そこにはお参りをする旅人の列ができていた。

「すごい……さすが伊勢神宮……!」

旅人たちはみんな、真剣な顔で銭を賽銭箱に入れて手を合わせて行く。一のように村から代表として来たのか、十分以上手を合わせている人もいた。
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