愛のバランス
「倫君? 私の気持ち伝わってなかった?」

麻里絵は静かに問いかけた。
伝わっていなければ、何度でも伝えたいと思った。

「私、倫君のこと大好きなんだよ。きっと倫君の『麻里絵愛』が大きすぎて、私の気持ちが隠れちゃってたんだね」

そっと身を寄せ、倫也の胸に顔を埋めると、それに応えるように、彼の腕がゆっくりと背中に回された。

「体調は大丈夫? 一昨日……しちゃったけど」

不安げな倫也の声が、耳元で揺れる。

「うん。平気」

倫也らしい言葉に、思わず笑みがこぼれる。

「俺、ずっと不安だったんだ。麻里絵の笑顔を見てても、麻里絵と身体を重ねて幸せを感じてても、ふとあの日の麻里絵の言葉が頭を過って――」

麻里絵はゆっくりと顔を上げ、彼の瞳を見つめた。

「今も?」

小さく問いかけると、不意に倫也の視線が泳いだ。

「今は――」

言葉を詰まらせて、彼ははにかんだ。

「今は?」

もう一度優しく促す。

「今は、今までで一番の幸せと麻里絵の愛を感じてるよ」

その言葉に、胸がじんわりと温かくなる。
麻里絵はそっと手を伸ばし、倫也の頬を両手で包んだ。

「倫君? 愛情は注ぎっぱなしだと無くなっちゃうんだよ」

それは冗談めかした言い方だったけれど、本心だった。

「えー? そんなことないだろ」

倫也が困ったように笑う。

「でもね、その時は継ぎ足すから、『足りない』ってちゃんと言ってね」

「うん。そうするよ」

「倫君。ずっと傍にいるよ。約束する」





【完】

※最後まで読んでいただきありがとうございました。
< 12 / 12 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:47

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

乾杯はふたりだけの秘密
凛子/著

総文字数/80,029

恋愛(純愛)58ページ

スターツ出版小説投稿サイト合同企画「1話からの長編大賞」ベリーズカフェ会場エントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
※「1話からの長編大賞」エントリー作品 公開 2026.6.29
愛のかたち
凛子/著

総文字数/28,862

恋愛(純愛)69ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
情けない男の不器用な愛。 公開開始 2022.11.5 完結 2022.11.12 鮭ムニエル様 さとみっち様 sadsukgc様 チャマ様 かしらぎ様 レビューありがとうございます。
それでも愛がたりなくて
凛子/著

総文字数/8,029

恋愛(純愛)10ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
無口でシャイな夫・斎藤賢治と、そんな夫が大好きな妻・塔子。 食の好みが合い身体の相性もいい二人の幸せな結婚生活が、あることをきっかけに狂いはじめる。 完結&公開 2022.5.20 さとみっち様 素敵なレビューありがとうございます。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop