ロマンスに道連れ

Are you ready?







この部屋にはいつも、
俺のことを邪魔したい女がいる。




「りっくん、先生いないって」

「だから言ったでしょ、入ろ」

「え、ほんとにいいのかな」

「何言ってんの?期待してついてきたの、そっちじゃん」


“先生不在中”と記された看板を気にせずに扉を開ける。
しんと静まった薬品の独特な匂の残る部屋の奥、二つ並んだベッドと、奥にはカーテンで隠されている予備用ベッド。

相変わらず来客ゼロ人の暇そうなこの教室は、俺の堂々たる秘密基地と化している。


「で、先輩は俺についてきてなにを期待してるんですか?」

「なにそれ、ひどーい。わかってるくせに」


やけに甘ったるい声に、きつめの香水。紙は胸元まで伸びていてぐるぐるに巻かれている、俺の好みとは全く正反対の女。
だけど胸はそれなりにありそうだし、適当に遊んでそうだから後腐れなさそうだし。
やけに甘ったるい声に本当は耳を塞ぎたくてしょうがないけれど、視覚的には完全に許容範囲。
メイクばっちりで睫毛があからさまに人工的なひとつ上の女の先輩は、入学してきたばっかりの俺に簡単にほだされている。本当にちょろい。


あーあ、ホントはもう少し清楚系で処女で黒髪でミディアムなかわいらしい女の子としたいんだけど。そういう子は俺についてこないから魅力的なわけで。
きっと簡単に手に入るような女なら魅力的になんか思えないのだろう。お前にとって恋愛ってイージーゲームだろって言った友達の声が聞こえたような気がした。

手前のベッドのカーテンを開き女をベッドに座らせれば、今更恥ずかしがって抵抗してくるから鼻で笑った。こういうのはたいてい、そんなに嫌がっていない。



< 1 / 39 >

この作品をシェア

pagetop