ロマンスに道連れ
「先生って彼女いんの?」
「俺の話聞いてもなんも面白くないだろ」
「いいじゃん減るもんでもないし、暇だし」
「阿保、俺はきっちり勤務中、お前は本来なら授業中」
「自習イコール自由時間」
「留年しても広瀬はいないぞ」
養護教諭にも養護教諭なりの仕事があるのだと言っておきながら、さっきからちっともデスクの上の資料に手を付けていない。むしろ俺が遊びに来たおかげで仕事放棄してノリノリで話してるのも先生の方だ。
「偏見だけど先生は彼女のことめちゃくちゃ愛でるタイプそうですよね」
「間違ってねえけどどう見えてんの俺」
「ぞっとしました」
「想像すんな、阿保」
たまには男二人で話すのもいいだろう、とソファにだらしなくもたれている俺のほうを向く。
別に莉子センパイのために浦野の恋愛の価値観を知りたいわけじゃない。俺と一回り離れてる大人が、どんなこと考えて生きてるか興味があるだけだし。
「で、彼女いるの?」
「いる」
「え、まじ?」
「なんだよその反応」
「莉子センパイも知ってる?」
「おー、大学時代から付き合ってるからな、」
「……ふうん」
彼女の言う叶わないの意味を、俺は初めて知る。
ずっと好きなのだという彼女は、学生時代から付き合っている浦野を懲りずに追い続けている。自分のことじゃないのに、なんか心臓が痛くなった。