ロマンスに道連れ
やっぱり浦野とはジェネレーションギャップが激しすぎてお話にならないらしい。ちんぷんかんぷんな俺を見て浦野は可笑しそうに笑っている。
「難しいよな、取られたくないって思うのも、その人が幸せならいいやって思うのも、同じ感情の中にあるから」
「いや、後者は大して好きじゃないってことじゃん」
「それは違う、“好きな人が幸せそうならそれでいい”って、よく言うだろ」
「綺麗事だなあとしか思ったことない」
「まあガキのうちは死ぬ気で奪われるの阻止した方が絶対に後悔しないし、自分に素直になるのが一番だと思うぞ」
「………」
「心当たりがあるなら頑張れよ、クソガキ」
だから、お前に言われたくないっつうの。
はあ、と盛大な溜息をお見舞いしてやったら、なんだか嬉しそうに「可愛いな、素直じゃなくて」と煽られたので「うるせえ」と口をとがらせた。
「……浦野、結婚すんの」
チャイムが鳴る手前、職員室に用があるからと俺も揃ってここから追い出すらしい。
白衣を羽織った浦野に対して投げかけた質問に対し、浦野は振り返る。
「なんせ絶賛喧嘩中だからな、彼女家出中」
「振られたかプロポーズするかの二択、わかったら教えてください」
「吉野が素直になるなら考えとくわ」
「ケチ」
―――でもまあ、王道だけどジューンブライドって言うしな。
そう言って職員室に向かっていく浦野と保健室を出て自分の教室に戻る帰路で聞いたことないそのワードを検索にかけた。
6月に結婚すると、一生涯幸せになれるなんていう言い伝えがあるらしい。彼が言っていたことは、つまりそういうことなのだ。