五十里せんぱい。
ー朝。昔はとても憂鬱だったその時間。今は、朝は1日で一番好きな時間だ。


いつも使う通学路の小道の先で、先輩に会えるから。


チラチラと時間を確認しながら、そのバス停につく。


先輩とは、たまたまこのバスで一緒になったことがあり、味をしめた私は毎日この時間で登校するようになった。


私がベンチに座ってしばらくたち、バスが来る時間が近づくと、彼は慌ててやってくる。


始めこそ驚いて照れ臭そうに「おはよう。」といっていた先輩は、今では当たり前のように挨拶してくれる。


「おはよう、秋桜(さくら)


元々垂れ目がちな瞳をさらにふにゃっとさせて微笑んでくれる。私はいつもこれだけのために早起きしてここで待つ。


「おはようございます、五十里先輩!」


今の私は、友だちが見ていたら、いつものように苦笑するであろう笑みを浮かべていることだろう。


先輩がかっこいいのが悪い。そうだ。


「今日も朝から元気だね」


まだ眠そうな先輩が言う。


「えへへ、そうですか?先輩に会えたのでっ!」


いつもよりも、ストレートに言ったつもりだ。なのに先輩ときたら、


「あはは、ありがと」


私の言葉を冗談だとおもったのか、真剣に取り合ってくれない。


(やっぱりだめかー、先輩鈍感だしなぁ…)
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