婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!

 シャロンは悲しそうに微笑んで、エルベルト様のもとへと戻っていった。しっかりと抱き合うふたりを視界に入れたくなくて、涙をこらえながら視線を落とす。

「セシル、お前はこのまま屋敷に戻れ。勘当したのだから夜会に参加できる身分ではなくなった。そのドレスは餞別代わりにくれてやる。ユリウスと乗ってきた馬車を使わせてやるから、私たちが戻るまでに出ていけ」
「…………」

 私に見向きもせずに父はそれだけ言って、エルベルト様とシャロンを促し会場の奥へと足を進めていった。呆然としている私に、エルベルト様が振り返って吐き捨てるように告げる。

「ああ、それから。お前のような偽魔女をこの帝都ジュピタルで見かけたら、すぐ牢獄に入れろと騎士団には通達しておくからな! 二度と戻ってくるな!!」

 ここに私の味方はひとりもいない。

 もう、この貴族社会(せかい)には私の居場所もない。

 私に最後に愛していると言ってくれたのはお母様だった。
 あれから私を愛してくれる人なんて、どこにもいなかった。

 それなら、もう愛を求めるのはやめよう。求めるから裏切られて傷つくのだ。
 愛なんて求めないし、そんな不確かなものはもういらない。


 だから私はもう誰も愛さない。


 どんなに優しくされても。どんなに金髪碧眼の美男子でも。どんなに優雅にエスコートされても。
 例えそれが家族であろうと、愛の言葉を交わした婚約者であろうと、そんなものはすべて偽りだった。

 私はすべてを失って残酷な現実を知ったのだ。こぼれ落ちる涙もそのままに、たったひとりで会場を後にした。


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