婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!

 会場から出ると、目の前には兄と乗ってきた馬車がすでに待機していた。

 手回しがよすぎて、すべて計画されていたんだと理解する。
 それなのに浮かれて準備していた私は本当に馬鹿みたいだった。

 馬車に乗り込むと座席の上に見覚えのない布袋が置かれていて、その上には私宛の手紙が置かれている。手紙は兄からで力になれなくてすまないという謝罪と、当面は袋に入っている金貨を使えと書かれていた。

 私を見捨てた人から金貨を受け取りたくなくて、布袋はそのまま兄の私室へ置いてきた。それから年に数回ほど領地でこなしていた、魔物討伐の資料を小さなテーブルの上に用意する。

 危険な仕事は闇魔法が使える私の役目だったから、領地の民が困らないようにしたかった。
 どうか資料を見てもらえますようにと祈り、わずかながら貯めてきた金貨と小さな鞄をひとつだけ抱える。

 そうして、たったひとりマックイーン侯爵家を後にした。



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