婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!

 泣きながら抱きつけば、エル様も腕を回してくれた。婚姻さえすれば、わたくしは公爵夫人として自由にできる。

 そして、フューゲルス公爵家はわずかとはいえ皇族の血が入っている。現皇帝が救いようのない馬鹿なら、エル様が皇帝になれば必然的にわたくしが皇后だ。

 婚姻宣誓書を提出した後、エル様と情熱的な一夜過ごした。



 翌朝、気だるい体をすり寄せて、甘えた声でねだるように囁いた。

「嬉しいわ、これでずっとエル様のそばにいられるのね」
「もちろんだ、これからもずっと一緒だよ」
「でも、ひとつだけ不満だわ」
「なにが不満なんだ?」

 ここでほんの少し瞳を潤ませて、上目遣いで夫となったエル様を見つめる。

「エル様は、正式な後継者なのに、あんな悪魔皇帝が帝国を治めているなんて、納得いかないの」
「いや、確かに皇族の血は入っているが、それも五代前に皇女が嫁いできたきりだ」
「でも、正当な後継者よ。だって今の悪魔皇帝は子爵家の側妃様だったから冷遇されていたのでしょう? 家格や血筋的にもエル様が皇帝になるべきよ。この前の特別会議もひどかったわ」
「それはそうなんだが……」


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