婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!

 そこでエル様は口をつぐんでしまった。いきなり皇帝になれと言ってもすぐに決断などできないだろう。だからそっと背中を押してあげる。

「エル様、わたくしはエル様こそ皇帝にふさわしいと確信しているわ。それに光魔法が使えるわたくしが皇后になれば民衆の心も掴めるし、悪魔皇帝と魔女を倒した正義の皇帝として後世に語り継がれるのは間違いないと思うの」
「う、うむ……」
「エル様が皇帝になって英雄としてこの国を治めるのよ。エル様にしかできないわ」
「そう……か。そうだな。今回の教会の件もやり方が卑怯だったのだ。こんな悪政を許してはいけないな」

 少しずつその気になっているエル様に、最後の後押しだ。わたくしはエル様の胸に顔をのせて、ひと粒の涙を落とす。

「エル様、お願い。お父様の仇を取って」
「シャロン、泣くな。私が必ず、皇帝になってこの国を立て直すからな」
「エル様、愛してますわ……!」
「ああ、私も愛してる!」


 完璧な計画に笑いを堪えるのが大変だった。 


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