婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
さらに貴族たちは、聖女を妻にすることが一種のステータスであるから、手放すのは惜しいはずだ。
「ふんっ……ならば、黙って待っていろ。私がしっかりと準備する」
「魔女が帝都にいると聞いたわ」
「なに?」
「エル様を皇帝にするいい計画を思いついたの。あなたが私と離縁しないと約束するなら、計画を話すわ」
「……わかった。話してみろ」
結局この愚かな男はわたくしの言葉に逆らえない。だってこの男を皇帝にできるのは、わたくしだけなのだから。
そうして一週間後、魔女を捕らえたと報告を受けた。
「魔女はあの薬屋で働いていた女でした。魔道具を使って見た目を変えていたようです。真紅の瞳なので間違いありません」
フューゲルス公爵家専属の兵士たちはいい働きをしてくれた。
「そう。今から魔女のところに行くわ。魔封じの腕輪はつけてあるんでしょうね?」
「ああ、それなら私が手配した。公爵家の代々伝わる秘宝があったから、万全を期して使わせた」
「まあ、さすがエル様ね。機転がきくわ」
「当然だ」
計画を聞いたエル様に、これからもわたくしの知恵を受け取りたいなら蔑ろにするのは許さないと告げた。結局、数日前にあっさりと浮気相手を切ったようだった。
わたくしとエル様は、早速魔女の顔を拝もうと地下牢まで足を運んだ。暗くじめじめした地下牢は気分が悪かったけど、仕方ない。
この日、わたくしは本当に神様がいるのだと実感した。