婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!

 私は食い気味に返事をした。即決だ。即決以外ない。

 魔女がうんぬんは置いておいても、売られる心配がなく衣食住が保障されるのだ。しかも、稼げるようになるのなら、ひとりで生きていけるかもしれない。こんな好条件はない。

「お、おい! その女はオレの商品なんだよ! ま、魔女だからって横取りすんじゃねえ!」
「ボス! 魔女相手はヤバいって!」
「うるせえ!」
「ふんっ、騙して連れてきたくせによく言うわ。私の機嫌がいいうちに引きなさい」
「なんだとっ!? だったらせめてその女を買い取れ——」
「黙れって言ってんのよ。うるさいわね」

 苛ついた様子の魔女が片手を軽く振ると、黒い花びらが無数に放たれて四人の男たちを締め上げるように拘束した。四人の男たちは声も出せずにもがいている。

 ほんの一瞬の出来事だった。

「まったく、相手を見て喧嘩を売りなさいよ」
「ゔゔー! ゔゔゔゔゔ!」
「私? あら、名乗ってなかったわね。アマリリスよ。アマリリスの魔女」


 アマリリスの魔女。それはこの世界にいる四大魔女のひとりだった。


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