婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!

 魔女の力を使って視ると、確かに身体全体に黒い霧がかかっている。呪いで間違いないが、通常であれば呪いのアイテムを中心に霧が視えるのに、今回は身体全体を覆っている。

「ちょっと診せてもらうわね」

 そう言ってから、近くにいた文官の袖を捲り上げた。すると黒い霧もふわりと動く。

「なるほど、呪われているのはこの人たちが着ている制服ね」
「しかし、この数の制服がすべて呪われたアイテムになっているとは考えにくいな」
「確かにそうね。普通ならありえないわ」

 レイの言うこともわかる。一着や二着なら怨念が呪いになったのだろうと考えるけど、これだけの数に呪いが現れるなんてありえない。

 それなら、残る可能性はひとつしかない。じっくり考えるのは、とりあえず目の前の苦しむ人たちをなんとかしてからだ。

「まずは解呪するから離れてくれる?」

 私が両手を広げて、黒い霧を操作しようとした時だ。

「お義姉様! もうやめて! これ以上皆さんを苦しめないで!」

 二度と聞きたくなかった甲高い声の方へ振り向けば、大きな金色の瞳に涙を浮かべたシャロンが歩いてきた。
 あの時の記憶が一気に甦った。


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